カウンター料理を取り入れよう

updated: 2017.04.01.

旅館料理への提案。
カウンター料理を取り入れよう

「へいっ、大変お待たせしました!」と、カウンターへの案内に30分ほど待たされて立ち上がろうした時、小声で「あの人はダメ」と、当時、幼稚園の息子が袖を引っ張った。家族で行ける程度の築地の寿司屋での出来事だ。カウンターの中には、板前さんが5人ほどいたのだが、そういえば前回来た時、その板前さんはよく喋るが、出されるお寿司は崩れていて、握りの強度も不揃いで、イマイチだったのを思い出した。自分が設計した店に連れて行くこともあって、息子の大好物は、昔も今も寿司であった。そのお店は、一時期NYにも店があったぐらいで、下積みさんもたくさんいて、下ごしらえも丁寧だ。当然、どの板前さんが扱うネタもシャリも同じなのだが、結構、味は違っている。やはり、職人さんといわれる世界(ちなみに、個人的な感想では建築家も)は、個人によってでき栄えが大きく左右される。
 同じカウンター料理でも、「肉を焼く」という行為は、それほど差が出るものではないらしい。だからこそ、ロッキー青木氏の店の接客がパフォーマンスになったのかもしれない。されど、注目すべきはあの接客ではなく、そのシステムにある。「BENIHANA」は、カウンターが原則8席。概ね、2~4人のグループ客が多いので、2グループを、一人のパファオマーが取り仕切る。食べる速さというのは個人差が大きいようで、一人の職人さんが取り仕切れるのは、概ね5人ぐらいまでである。それ以上になると、片っ端からネタを放り投げる羽目になる。鉄板の席に着くまでは、全体を見渡せる席などで、そのグループが揃うまで待たせる。ここが大切なところだ。期待を高めて、Max8人が揃ったところで肉を焼く。普通は5人が限界のところも、まとめてやれば、それ以上に対応することができる。料理の注文を取る係も運ぶ人間も不要だ。確かな素材を目の前で調理する熱い油は、直接、大脳を痺れさせる。
 熱い油が大脳に染みるのは、天ぷらも同じだ。ただし、こちらは素材の処理の仕方と揚げ具合によって、寿司屋同様、職人さんの腕前ででき栄えは左右される。寿司、天ぷら、鉄板焼。この日本が生んだ画期的なカウンター料理のシステムを、旅館にも組み込みたい。あの「会席料理」なるものが普及し過ぎていて、個性を出しにくくなっていないだろうか。個性を出そうと思って刺身をカルパッチョにすれば、いつ刺身が出るのだと客が気色ばみ、マグロが入ってなければ、刺身でないといわれそうではずせない。悩ましい世界だ。そこに、カウンターの世界をトッピングしたい。館内でなくても、自前でなくても、近所で店を用意することでもいいのではないか。古ぼけた民家のお座敷寿司、天ぷら、鉄板焼。魅力的だと思うのだが……。