デザートと朝食

updated: 2018.04.01.

デザートと朝食には
異なる照明を

メインの肉料理を食べて、満足に浸っていた。魚料理も丁寧な下ごしらえで、申し分なかった。知人のフランス料理のシェフが独立したので、お祝いを兼ねて伺い、ディナーを楽しんでいた。お腹はいっぱいだが、デザートは別腹というから、やっぱり食べるかと心待ちにしていたら、出されたのは既製品のごく普通のチーズケーキだった。そりゃあそうだ。前菜から始まり、凝ったメインの仕込みをして、その上、パティシエがつくるようなデザートまで手が回るゆとりがあるはずもない。客である私が求めすぎたのかもしれない。
「明日の朝はトーストとコーヒーと、卵焼きかオムレツが食べたい」と、連泊中の旅館さんにお願いしたことがあった。まだコンビニが地方に普及していない時代のことだ。困った女将さんは、近所の純喫茶の出前でモーニングセットを用意してくれた。出されてみたら、思わず吹き出してしまった。まったくその空間に合っていなかったからだ。考えてみれば、朝食のために洋食のシェフを待機させるシフトが当時も今も組めるはずはなく、当然の帰結であった。こんな経験は、料理で有名な山間の旅館でも経験したことがある。朝食はエッグのキッシュタルトで、連泊したら2日目は冷凍のパンケーキだった。ブッフェ全盛のこの時代だが、個人的にはあれが苦手だ。ベッドの傍らまで、朝食を運んでもらい、パジャマのまま食べるのが私にとっては理想である。ワークライフバランスといわれ、人手が足りない時代に、朝飯に卵料理がないぐらいで目くじらを立てることもない、というご意見はごもっともではある。だが、やはりサニーサイドの目玉焼きが食べたい。
 振り返って周りを見れば、スープ専門店、カレー屋、カフェのパンケーキ、回転寿司・・・。どこもプロがつくっていない。ある有名ホテルでカレーを注文したら、ビニール袋の切れ端が入っている時代だ。ほとんどの料理は前日に仕込んだもの。スープは大量生産だし、サラダも前日の仕込み。残るのは卵料理だけだ。実のところ、今時、若い調理師は専門学校を卒業している方が多いと聞く。意外にも、そこでオムレツをはじめ、料理の腕を鍛えられているそうだ。はたまた、フロントや事務スタッフに卵料理だけ覚えてもらうとか、そのためにアルバイトを雇うとか、この困難な問題をピンポイントで対処できると可能性はあると思う。
 建築においては、夜の会食の空気感と朝の新鮮な空気は違うので、朝食会場の照明は色温度の高い昼間の色にし、光の当て方も柔らかくして、穏やかにするという技法を取るようにしている。今や器具はLEDなので照明容量は問題なく、予算がある時はパソコンでシーン設定し、そうでない時はマニュアルでお願いしている。やってみると、マニュアルのほうが使いやすいとも言われてたりしている。