ホテル・旅館のフロントは

updated: 2017.03.01.

ホテル・旅館のフロントは
今後も必要か?

「ユーアー、テロリスト?」「はっ?ノー。アイム、ツーリスト」。NYのジョン・F・ケネディ国際空港のイミグレーションのオジサンは、9.11後に入国の際に指紋認証が導入されても、10年ぐらい前までは気さくだった。今は、どうか?「はい、チーズ」とカメラに微笑み、スマホに画像が取り込まれる。このデータが、本人が気づかぬままスキミングされ、どこかに送られ、誰かがあなたの指紋データを持ったカバーを指に付ける。これで、あなたも立派なテロリストだ。他人に成りすまし、米国のイミグレーションをスルリとくぐり抜ける。これはSFの世界ではない。普通の中学生がネットで少し勉強して、秋葉原で数万円の機械を購入すれば可能な話だ。
 ホテル・旅館では、宿泊者名簿に氏名などの情報を記載しなければいけないし、行政庁から要求があった時には名簿を提出しなければいけない。拒否すれば、罰金刑だ。旅館業法や厚生労働省の通達でも、これを徹底するようになっている。個人情報保護が叫ばれている今の時代に完全に逆行しているなあと、いつも感じている。最近、宿泊者名簿への記載が省略できるというニュースを聞き、厚労省もやっと時代に追いついたと思ったら、宿泊客の指紋を取れば、記載を省略する方針だという。指紋認証機械を各ホテルに購入させ、ネットでデータ管理するなんて、警察の取り調べ室の出張所のようなシステムだ。きっと、エイプリルフールのジョークなのだと思う。
 そもそも、ホテルに泊まるぐらいで、なぜ住所・氏名という最大の個人情報を開示しなければいけないかが理解できない。ジャンプ(無銭宿泊)する者はするし、客室内での個人的な嗜好(法律に触れるようなこと)を監視するには限界がある。お客が住所・氏名を記載している間、フロントスタッフが微笑んで立っている時間給を業界全体で換算したら、膨大な経費だ。設計的にも、かつては宿泊人数あたりのフロント長さの算定式があり、フロントの構え方がホテルの風格だと教えらえた時代もあった。今は客、ホテル双方にとり、この法律は時代錯誤だし、迷惑そのものだ。業界全体で、もっと声を大にして、こんなもの止めてほしいと主張していただきたい。
 チェックインの際には、クレジットカードで登録するか、デポジットを取れば、宿泊料金は回収できる。防犯カメラで顔認証や歩行認証を取り、ビッグデータに照会すれば、どこの誰かも判明してしまう。10年以内に違うシステムが一般化して、導入しやすくなるかもしれない。設計的には、物理的なフロントがなくなればスペースが省略できて、客室数も増やせる。新しいラウンジや、はたまた、新しいお客の迎え方を提案できる。もちろん、おもてなしや防犯に一番効果的なのは、スタッフの笑顔であることは、言うまでもない。