ヤマハ銀座店

updated: 2017.05.01.

金管楽器の輝き、「ヤマハ銀座店」。
1950年代をアレンジし直す

 銀座中央通りを新橋の方に向かって、夕刻歩く。突然、西陽と一体になり、金色に輝くファサードが現れる。まるで金管楽器みたいだなと思った。2010年初冬のことだ。新しくできた「ヤマハ銀座店」であった。なるほど、コポーレートイメージをよく表している。しばらく佇んでしまった。夕闇が深くなり、銀座らしく、ネオンが輝き出した。内部も、まばらな金色に光り出した。どうやら、金色のガラスに秘密がありそうだと確信した。
 空気が透き通る寒い冬に、結構な時間、この金色のファサードを見ていたのは、個人的に訳があったからだ。その数年前、銀座6丁目にある「交詢ビル」(バーニーズニュヨークが入居している)の設計を担当していた。外装の基本コンセプトは、イギリス人のデビット・チッパーフィールドを私が推薦した。彼から提案されたのは、金色のメッシュを入れた三層複層ガラスの案であった。交詢ビルは店舗、レストラン、事務所、会員制倶楽部のまったく異なる要素が組み合わさった複合ビルだ。銀座においては、百貨店に次ぐ大規模となる。複数の機能を、一つの金色の鎧で覆ってしまおうとの試みであった。ただ、金色メッシュ入り三層ガラス(ドイツ製)はあまりにもコストが高く、結果的に、セラミックプリントしたガラスで覆った。でき映えは、良かった。
 ヤマハ銀座店のガラスの仕掛けは偶然知った。実は銀座で、ある宝石店のファサードをシルバーのメッシュで覆えないかと検討していた。考えたのは、銀箔と銀粉をガラスの間に挟み込み、グラデーションをつけるというアイデア。検討すると、合わせガラスの接着シートの技術革新が進み、そこに銀箔を仕込めば可能であることを確認した。結果的には、新しい技術だった故の実績不足と、保証の問題が残り実現しなかった。ヤマハは、この銀の代わりに金箔・金粉を入れたもので、偶然にも同じようなアイデアであった。
 ガラスはローマ時代からある素材だが、精度が高く、安価な板ガラスの製造方法であるフロート工法が発明されたのは1950年代で、意外と最近だ。ガラスそのものの材質の進歩も目覚ましい。緑色の成分を抜いて高透過にしたものや、日射の影響を低減したLow-Eガラスなどが代表的だ。注目すべきは「シート」だ。ガラスの表面の内外に貼ったり、ガラス同士を合わせる時の接着に用いる技術だが、これも進歩が目覚ましい。印刷技術の進歩と合わせて、個別の表現も自由になっている。最近の商業建築は、この応用編が多い。気になるのは、日本のように湿度が多い気候だと、性能は進化しても陰影が少ないこと。つるっとした表現は、どうも無理があるようには思う。LAやメキシコのような乾いた空気の中では光り輝いて、風景に合っているとは思うのだが。