丸亀市猪熊弦一郎現代美術館・図書館

updated: 2017.12.01.

長寿命のミニマム建築。
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館・図書館

 四国のある駅前に立つ。女子高校生のはしゃぐ声、老人達の日向ぼっこ、子供達の自転車……。典型的な地方都市の風景だ。ただ、右手を見ると、高さ20m角ほどのゲートがあり、その前に赤や黄色の現代彫刻のオブジェが点在している。広場の床は全体がストライプ模様になっているし、ゲートの中には、白い壁面に子供の落書きのような絵(大理石に黒色を象嵌している)が展開している。うん?駅前全体が美術館の一部になっており、あの大きなゲートは現代の神殿のようにも見える。思えば、ギリシャ神殿の大英博物館しかり、上野にある国立博物館の建築群しかり、ある権威づけのオーラが必要なのかもしれない。ただ、この丸亀市猪熊弦一郎現代美術館・図書館(設計:谷口吉生氏)には、建築後20年経過しても、オーラはあるけれど、デザインのくたびれ感や嫌みがない。その要因は、空間の巧みなボリュームの組み合わせとともに、使われている素材にあると思う。
 楽屋口のような質素な入口を抜けて、エントランスホールに入る。天井高さを抑え、光あふれる中央のホールへと誘う。ここから、各展示室にアクセスする。床は、穏やかなベージュ色のライムストーンと均一なグレーの御影石。壁と天井は、見切りもなく白1色のペンキ塗り(テクニックとして、人工木材でジョイントして塗装しているので見えない)。カウンターの天板はオーク材、腰はステンレスの厚板。展示室は、床がオーク材のフローリング。ほとんどの空間は、これらの素材のみで構成されている。それ故に、ディテールには細心の注意が払われている。たとえば、階段もライムストーンでできているが、石の厚みをあえて踏面の方に見せて、その面を荒らす加工を施し、ノンスリップを省略している(公共建築としては、賛否両論があるかも)。丹念に細部をつくるという谷口氏の姿勢には、いつも敬服してわが身が引き締まる。
 御影石、ステンレスは、時間が経っても劣化しない。だから、床材、外壁、カウンターなど、蹴られるような耐久性が求められるところに用いる。ペンキの壁も、ともすれば単調で、一見表情が少ないように思われがちだが、照明によって豊かな表現が獲得しやすい。オークの木材は穏やかに焼けて、数年で落ち着く。それを見越して色を決めないと、時間の経過とともに違和感が出ないとも限らない。
 建築の寿命は、長い。適正なメンテナンスを行なえば、ざっと50年以上は普通に存続すると思うし、そうでなければいけない。インテリアにおいても、しかりである。10年以上の単位で、その時代の空気感を表すデザインでありたい。そうなると、用いる素材が段々、厳選されてくる。その方が、結果としてコストが抑えられる。そう断言したい。