近隣敷地の可能性

updated: 2018.12.01.

旅館業法改正による
近隣敷地の可能性

 薪の暖炉、ソファ、ドリンクステーション、フロント、水盤。上部は青い空が広がり、風が吹き抜ける。周りを見渡せば、屋外廊下に客室の入口が並び、屋外階段も無造作に設置されている。ここはロサンゼルスにあるデザインホテルの中庭かと思った後、京都駅の南側に位置する「サクラテラス ザ ギャラリー」にいることを思い出した。暖かなカリフォルニア(冬は結構、雨も多いし、寒いのだけれど)ならともかく、寒暖の厳しい京都にできた時はどうかと思ったけれど、意外と違和感はない。フロントまで中庭に出してしまっているのには驚いたが、長居するところではないし、屋外のソファも、ガスを下に設置した薪ストーブで、真冬のほうが心地良いかもしれない。
 屋外廊下・階段は、その分の面積を容積率という規制から外すための手段から選択されたと思う。結果として、中庭の雰囲気づくりにプラスに働いている。建築基準法では、集合住宅の廊下は面積対象外なのに、ホテルでは含まれるという不条理が存在しており、これを合法的に潜り抜けるという憎い演出でもある。そして道を隔てた別敷地には、違うグレードの客室とスパを配置している。
 周知のように、今年6月15日付けで旅館業法が改正された。これまで、ホテルと旅館が分離されていたが、「ホテル・旅館営業」と統合された。元々よくわからない区分だったのを、遅ればせながら、ようやく時代に追いついてきたという感だ。同じ改正の中で注目すべきなのが、「玄関帳場等の基準の緩和」だ。それまではフロントを通らないと客室に行けないという時代錯誤の法文であった。もっとも、今の段階では各都道府県にラブホテルなどを規制する条例が存在し、いろいろな規制が存在していることも多いので、注意は必要だ。具体的には、緊急時、迅速に(10分程度といわれる)対応できたり、カメラで監視、鍵の受け渡しができればよいとされる。
 この結果、いろんな可能性を感じる。とりわけ、近隣の別敷地(10分ぐらいで駆けつけるところ)に、フロント機能なしで「増築」できることは魅力だろう。たとえば、別のテイスト(高級、リーズナブルを問わず)の客室を増やすことが可能だ。外湯としてスパエリアをつくるとか、食事処の設置も可能。すでに、丹後篠山で行なわれているように(ここは別の緩和を用いているが)、複数の宿泊施設に対して、一つのフロント機能をまとめて対応することが理論上可能だ。ナイトシフトという24時間の緊急時対応は、警備会社に依頼するほうが、合理的かもしれない。こう考えると、大きな敷地を求めるのではなく、複数の隣接地の集合体という構成の可能性があると思う。