2つの偽装事件

updated: 2016.04.01.

昨年、建築業界を揺るがせた
2つの偽装事件。その性格の違い

 昨年、建築関係において、2つの大きな「偽装」事件が発覚してしまった。免震ゴムの性能偽装と、横浜のマンションの杭のデータ改ざんだ。かつての、姉歯事件を思い出された方も多いと思う。また、建築界は悪いことばかりしているように思われて、真面目に仕事に取り組んでいるわれわれには、心外な報道も多かった。この2つの事件は、同じ偽装でも性格は異なる事件だったので、少し誤解を解いておきたい。
 まず、東洋ゴム工業による免震ゴムのデータ偽装だ。免震構造は阪神淡路大地震以来、その有能性が高く証明され、ここ数年、急速に広まっている。免震の原理は、こうだ。建物の下部にゴムなどを挟み、地震の力を減衰させる。車にもタイヤとサスペンションがあって、乗り心地が高まるのと同じだ。その免震機構の特徴は、建物がそれなりに「ゆっくり、結構動く」のだが、その時に周囲とぶつからないように、隙間を開けておく。この優秀な装置はメーカーが開発し、製品ごとに国交省の指定実験を行ない、「大臣認定」を受ける。余談だが、この認定を受ける実験装置は日本にはない!米・サンディエゴの米国海軍の装置を使用させてもらっているはずだ。知り合いの担当者は2年に1回、西海岸に出張できるから楽しいと、見栄を張っていた。
 問題のゴムは、試験はパスしたが、製品としてのバラツキを「偽装」した。つまり、予想以上に地震時に動く可能性が発生してしまった。再度、構造計算をした結果、すべて想定の範囲内とのことだったので、安全は、一応は確保されたとの報道に安堵した。では、この偽装を誰が見破ることができたのか。答えは、偽装した本人しかいない。高度な部材の変形量データを、他人がチェックするのは不可能だ。車なら、一般ユーザーがタイヤの成分の変形について、あらかじめわかるはずもないのと同じだ(乗り心地でわかるかもしれないが)。それ故、問題は根深い。
 横浜の杭の事件は、同じ「偽装」でも、まったく性格が違う。いくつもの段階で防げたし、普通に施工者も設計者も確認する内容だ。施工業者が杭のデータを取り、工事施行者に報告し、それを設計の構造担当に連絡する。われわれの事務所では、この事件が発生する以前から、すべての杭のデータを送ってもらうか、立ち合って確認する。今はスマホがあるので、ほとんどはどこにいても同時に確認ができる。支持層は、一定ではない場合がある。事前調査と違う場合、施工者から設計者に連絡があり、構造担当が検討・判断し指示をする。当たり前のことだ。件の施工会社の役員が、「その時、それを何とかするのが杭屋の腕の見せ所」と、記者会見で発言したのには、腰を抜かさんばかりに驚いた。普通は、そんなことはありませんので、誤解なきように。