インバウンドへの対応

updated: 2019.01.01.

アッパーミドル層のインバウンドへの対応
―マーケットの中身―

 「アイムソーリー、アイ ハブ オンリー キャッシュ!」。冷や汗をかいて、恰幅のよい黒人のバス運転手さんに、現金でよいか尋ねていた。今冬、NYのバスでの出来事だ。マンハッタンの北に気になる建築があり、見に出掛けた帰りだった。行きは知人の車に便乗させてもらい、帰りはタクシーを拾うつもりだったが、雨も降ってきたので、バスに飛び乗ってしまった。ホテル近くのメトロポリタン美術館辺りで降りようとしたら、支払いはメトロカードだけだという。値段は確か2ドルぐらいで、乗客は、その身なりから裕福にはほど遠い人々のようだった。運転手さんは、現金は受け付けないのでそのまま降りろ、と言うので甘えてしまった。
 約40年前にNYでバスに乗った時は、確か1ドルぐらいだった。もっとも、その頃は、1ドルが250円ぐらいだった。経済的に最下層の人々の公共交通手段は、40年経過してもあまり変化していない。その頃、ホテルの宿泊代は300ドル出せば結構なレベルのところに泊まれたけれど、最近では500ドル以上出さないと、真っ当なところは難しい。やはり、日本はこの20年間、デフレだったんだなあと感じる。
 浅草から21時頃の地下鉄に乗ると、周りはすべて外国人ということは、めずしくもなくなった。話をすると、六本木のホテルに10日間ほど泊まり、1泊は500ドルぐらいとのこと。こんなことは、東京だから起きていると思っていた。似たようなことが、高松の串揚げ屋さんで、金沢のすし屋さんで、京都のフレンチであった。カウンターの隣のオーストラリア、カナダ、イギリス、そして中国の方々は同じような返答だ。
 インバウンドのお客が増えている。それは、日本のデフレによって、バックパッカーばかりが増えているのではない。マスとしてインバウンド客が増え、その中で一番、ごく普通の日本の良さを味わっている層は、アッパーミドルの客層だ。上質な接客、料理、清潔感、安全・安心感を楽しんでくれている。ただし、タブーなものがある。それは、良い・悪いということではなく、馴れ親しんだ肌感覚の部分だ。一つは、寝具。畳の上に薄いマットと厚い掛布団では、ベッドに慣れ親しんだ方々には、ほとんど駄目。おそらく、日本人でも難しいという世代が増えていると思う。これには、分厚いマットレスを準備すれば大丈夫。朝食の発酵食品、これもタブーのことが多い。夜の酒のつまみとして楽しむのと、朝食のそれは別世界だ。和定食だけとか、和食ビュッフェでも、簡単なパンとジュースとコーヒーは準備したい。などなど、ハードの不足も、ソフトでカバーすることにより、アッパーミドル客層を取り込んでいける。