カーラ ディヴォルペ

updated: 2006.06.01.

サルジニア島、至福の時間

 村上龍は、ある小説の中で「サルジニアという島のコスタ・スメラルダという海岸だけで、3つのリーディングホテルがある」と書いている。その中のひとつが、カーラ ディヴォルペだ。
 昼間、プールサイドのレストランで、焼きたての肉をつつく。白ジャケに蝶ネクタイ姿の陽気なイタリアンが冗談を言いながら、飛び切りのシャンパンを注いでくれる。やっぱり、極上のリゾートはこうでなくっちゃ、と至福の瞬間に陶酔する。とかくリゾートとなるとTシャツで、カレーライスを放り投げるようにサービスされる感すらある日本では、この恍惚は決して味わえない。
 ちなみに、この海岸にある3つのホテルでは、ディナーをどこのホテルからでも自由に選べる。それぞれ特徴あるレストランを有し、お客がその日の気分で決められる。予約の料金ももともと1泊2食の料金体系だ。日本の旅館もこれぐらいのシステムがあってもよいと思うのだが、隣に旅館同士で似たような料亭を持ち、同じような食事、サービスが提供される。なぜなのか。
 カーラ ディヴォルペのデザインテイストは、南イタリアの民家を題材にはしている。しかし、それは、しっとりした落ち着いた佇まいではない。もうやりたい放題自由奔放である。ピンクや黄色で階段を塗り分けたかと思えば、客室の扉は、アクションペインティングのような絵の具を滴り落とした塗装だ。
 サルジニアから遠く離れた日本で、南ヨーロッパのリゾート風に造りたいという企画を考えている人がいたら、すでに訪れたことはあると思うが、再度このサルジニアに1週間ほど滞在されることをお勧めしたい。そうすれば、ここの絢爛豪華さは、決して日本では実現できないと気がつくはずだ。じっくり見れば見るほど、その差を痛感する。壁の騙し絵、扉の塗装、果ては石のマンホールの形まで、とてもとても日本人には真似できない遠い世界であることが、身に染みる。
 正直、私も最初は、無邪気にこのデザインの楽しさに驚き、憧れ、盗みたいと思い、その後、とてもできないことを思い知らされ落ち込んだ。でも、しばらくして、はたと気がついた。待てよ、この世界は、日本にもあるぞ、そうだ、かつての旅館のそれだ。京都・島原花街の揚屋「角屋」を思い出してみてほしい。正直、よくやるなあと呟きながらも、みなさん照れずに、借り物でなく楽しんでいるではないか。日本の温泉旅館の華やかさも、造り方次第ではカーラ ディヴォルペの楽しさ、華やかさに決して負けていないと思う。
 何も、侘び寂びだけが日本の美学ではないぞ、かつての遊郭の華やかさ、絢爛豪華だって日本の良さだと。カーラ ディヴォルペの少し塩っぽいプール(こういうところが、イタリアっぽいなあ)に浮かびながら、よし、いつか日本で、思いっきりど派手な和風リゾートをデザインするぞ、とワインの酔いが廻る頭で思った。

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