システムの再構築

updated: 2021.01.01.

デジタルツール化に出来るもの
人が行ってこそ、有効なもの
今こそ、システムの再構築を

ときどき、私へのご下問をもらうことがある。「今でも手描きで図面を描いているの?」という類いだ。私の事務所からで最終的に発行される図面は、CADと呼ばれるコンピューターで描いたもの。しかしながら、わがオフィスで唯一、私の机の上にだけは製図版とT定規が転がっている。今では、手描きの図面は貴重品のようだ。ある時、中国人クライアントに、イエローペーパーと呼ばれる薄いトレーシングペーパーに描いたスケッチを見せたら絶賛された。訳を聞くと、中国では気にいった設計者に依頼しても、最後は誰が描いたかわからないコンピューターグラフィックの絵が出てくる。その点、手描きスケッチは、石川さんの作品とわかるので安心する、との褒め方であった。私自身はCADと手描きに差異はない。手作りの模型も3Dプリンタも併用する。各々に特徴があり、それらをハイブリッドさせながら思考している。余談だが、3Dプリンタは、人が苦手とする細かい細工が得意。したがって、グラフィックな造形と表現が好まれる傾向になる。
ホテルにおいては、このコロナ禍でひたすらに何でもデジタルツール化しようとしているようにも見える。法律が阻んでいる無駄もたくさんある。代表的なものは、チェックインの際の宿帳への記載だ。ハード的には、フロントを無くすことは容易い。ロビーにセキュリティゲートで、(これもいらないかも)ICチップをかざし、顔と歩行認証をAIが行えば、今よりも数段上の安全性は保たれる。だから、今さら宿帳への記載など無意味だ。ただ、フロントマンの笑顔と自然体によるチェック機能は、デジタルツールでは補えない。
航空機に搭乗すると、CAさんが非常口の位置と救命胴着の装着の仕方を実演してくれるのが、密かな楽しみだった(深い意味はない)。今では、ほとんどがVTRが流れるだけだ。ホテルで、客室に案内されることも減った。部屋に入ると、テレビが画面に館内案内が映し出されているが、最初の表示は非常口の案内ではないか。ちなみに、個人的には階段2か所へのルートと位置は必ず確認する。この部分は「声掛け」が重要で、デジタルでは代用出来ない。
チェックイン手続きはデジタル化しないで、安全確保はデジタルで個人の意識と責任に任せるというのは逆である。「声掛け」をはじめとする所作は、スタッフ個人の資質によるものではなく、教育によって身につくものだ。そして、教育の機会を確保するための時間を作る。そのために、デジタル化、アウトソーシング、リモートワークなど、できるものは試み、随時修正する。ホテル全体のシステムの再構築するのが、この苦しいコロナ禍の今ではないだろうか。