パンデミック後の流行は

updated: 2020.10.01.

100年前のスペイン風邪の後の流行は
大正ロマンのデザイン。
これからは素朴と優雅の時代

 

漫画、「鬼滅の刃」が流行っている。舞台設定は、大正時代。なぜ原作者たちはその時代設定にしたのか。もちろん、大正自由な空気感、和と洋が合体したビジュアル的なものが、現代に受けると計算したからだ。
今から100年前にスペイン風邪が流行った。第一次世界大戦の終末期で、実体は隠蔽され、中立国のスペインでは報道されたので、この名前がついた。今回のパンデミックにも、スペイン風邪になぞらえて同じ潮流ではないかと予測されることが多い。その代表例が、冒頭に挙げた鬼滅の刃の舞台設定だ。個人的には、当時流行った繊細な女性的デザイン、アール・デコは大好きだ。資生堂の初期デザインを担当した山名文夫の唐草模様をベースにしたデザインは、自分の原点のある部分だとさえ思う。第一次世界大戦終了後のこの時期、日本は戦勝国だったので、相対的に円高で豊かであった。それまで、高価過ぎて憧れだった欧米のものが輸入されやすく身近なものとなり、日本的アレンジを加えて流行った。カフェの女給さんの姿、ハイカラ、モボ・モガというちょっと知的で少しだけエロティックな空気感だ。
されど、今回だ。世界中がこのパンデミックに苦しんでいる。大正ロマンの時代とは異なり、残念ながらその後に来た1929年の世界恐慌の後のようになると思える。では、その時、どのようなデザイン・商売が生き残っていったかを検証してみる。
まず、メーカーで試みたのは、売上の向上を狙った実質の値下げの商品だ。たとえば内容量を2倍にして、値段は1.5倍にするとか、シャンプーとリンスを一本で済ますことができるというようなセットメニュー方式で、お得感を前面に打ち出した作戦だ。これは、初期はよかった。しかし、最後は上手くいかなかった。結局のところ、商品そのもの価値の値下げを行っていることを、消費者も敏感に感じたからだ。後の時代を生きる私が簡単に論じるのは容易だが、数多くの「キャンペーン」といわれるものは、この発想に近いのかもしれない。余談だが、今ではなかなか考えられないが、この時代「減資」した会社も多数あった。
その状況下において、後の会社の礎となった商品を世に送り出した例もあった。有名なのが、資生堂が販売した「ドルックス」という化粧品だ。それまでの廉価版の2倍の値段だった。パッケージは、銀地に墨一色を細い線を描いた、素朴で優雅なデザインだった。これが、資生堂は高級品という印象を世に伝えた。
パンデミックの後に生き残れるデザイン・商品は、素朴かつ優雅なものになると予測している。ゆめゆめ安売りに傾くことなく、自らの商品価値を掘り起こし、売り出してほしいと思う。