高輪プリンスのロビー

updated: 2021.02.01.

バブル直後の高輪プリンスのロビー
メンテナンスをする優先順位は、
ロビーのカーペット

エントランスを入ると、濃い茶に黒が混じりこんだ釉薬のタイルの壁が広がる。渋い、落ち着く。昭和の良いイメージロビーだ。あれ、どうも変だな。少し違和感がある。そうか、カーペットの色合いは華やかだが、柄は単調で踏み心地が薄い。廉価なタイルカーペットに張り替えられている。確か、その少し前に訪れたときは、緋毛氈のカーペットが擦り切れてくたびれた感が出ていて、この名門ホテルがどうなるのかと危惧していた。でも、懸命に選んだタイルカーペットはそれなりに華やかさを生み、天井のダウンライトもきちんとメンテナンスされていた。
実は、緊急事態宣言が出されている今の話ではない。バブルが弾け、不況下にあった、20年ほど前の高輪プリンスホテル(現・グランドプリンスホテル高輪)のロビーのことだ。村野藤吾設計の新高輪プリンス(現・グランドプリンス新高輪)の客室が気にいっていて、出張の定宿にしていた時期があった。ブッフェが苦手な私は、中庭に臨み、サービスも上質な高輪プリンスのラウンジで、アメリカンブレックファーストを頂くのが、好きだった。(残念ながらラウンジでの朝食は随分前から無くなってしまった)この時期、スタッフの袖が少し擦れていたり、ワゴンの上のクロスが古くなっていて、最低限のメンテナンスの予算で耐えているんだなと思うことがあった。されど、銀食器はしっかり磨かれ、サービスの質は落とすまいというスピリットは感じた。
厳しいコロナ禍において、メンテナンス費用の捻出どころではないと思う。各ホテル・旅館のスタッフが手摺を、窓ガラスを、自ら磨き、障子を張り替える。そして、ロビーのカーペットの状態をチェックしてほしい。現在はキャスター付きの鞄のお客さんが多いので尚更、敏感にその音と靴の裏からホテルの雰囲気を感じ取る。人がたくさん通るところが擦り切れていないか、退色していないか。もし、そうなってしまっていたら、予備のカーペットに部分張替えし、端のところと入れ替えが出来るかを検討する。次に、現在の技術では、タイルカーペットの模様張りを用いて、既存の特注カーペットのデザインをマッチングさせることも可能である。下地に専用のフェルトを仕込み、ふわふわ感も出せる。海外からの輸入品だが、I社の製品など、特注のタフッテドカーペットと遜色がない。先日も、ある旅館のロビーで試みたら、既存の特注カーペットよりも見栄えがするほどであった。ポイントを絞ったメンテナンスを怠らなければ、このコロナ禍の後に、よいことが待っているに違いない。メンテナンスは後ろ向きのことではなく、必ず創造的な価値を生むと云いたい。