高輪ゲートウェイ駅

updated: 2021.05.01.

明るく、空に抜ける
高輪ゲートウェイ駅。
合理的なプランの隈健吾の建築

右手の窓越し、すぐ届きそうなところを青色のラインが入った電車が並走している、100mぐらい先には、速度を落として東京駅に滑り込もうとしている新幹線が見える。並走していた京浜東北線の電車を一瞬抜いたかと思ったら、速度を落として駅に滑り込んだ。そうだ、品川から山手線の内回りで新橋に向かっていたんだ。扉越しに見慣れない風景に、品川と田町の駅の間に、昨年の3月に山手線の新しい駅が開業したことを思い出した。高輪ゲートウェイ駅だ。

約束の時間までには、余裕があることを確認して、駅に降りた。ホームから見上げる。明るい、高い、風が抜ける。駅特有のたくさんの架線も見当たらない、白い膜がホームの遥か上空を雲のように、浮遊している。電車の真上、ホームがこんなに高いのは、上野駅やロンドンの幾つかの大きな駅のようにターミナル駅では見かけるが、通過駅の上が、こんなに伸びやかにに抜けているのは清々しい。新しい街が生まれるのではないかと、ワクワクさせてくれる。

コンコースに上がってみる、南側に高さ5m、幅200m以上にわたって、パノラマが広がる、ゆっくりと進んでいる新幹線が、どこかリアルではなく映像の世界のようだ。この風景をみるためのベンチもある。ホームを下に見ながら、コンコース全体をぐるりと一周した。ホームに降りて、ホームを進み、また上る。鬼ごっこをしたら、永遠に捕まらないループ状の動線が、空間をより広げている。

何周かして、コンコースの一角にあるコンビニに入ってみる。スタッフはいない。チョコレートとトマトジュースを手に取り、出口の方に向かうと決済する機械がある。画面を覗くと手に取った商品名と金額が表示されている。そのままSuicaで決済して終わり。誰とも接触せず、スムーズで便利だ。ただホストコンピューターに購入履歴が何もかもかが記録される。誰かの監視の目を意識してしまう。不安の中に近未来の現実を感じる。
柱の壁、便所のいたるところ、漂白された杉材が貼ってある。床は、木風のシート、折り紙のようと表現される屋根もかなりの鉄骨の集積でできている。その鉄骨梁の横面に、ほんの僅か、構造的には、ほとんど効果の薄い木が貼ってある。今まで駅舎にこのような木材が貼られることはなかったので、これはこれで画期的で嬉しいことなのだが、「木造」とか、「木をふんだんに用いた」といった形容詞には、ちょっと違和感を覚える(新国立競技場もそうなのだが)。30mぐらいの架構ならば、木造で軽やかに出来るので、願わくばそうしてほしかった。