コンセルトヘボウ

updated: 2019.11.01.

世界一の音響効果。
アムステルダム「コンセルトヘボウ」

 大きな扉が開き、カラヤンが軽いステップで、階段を3段ほど下りてきた。割れんばかりの拍手。少し立ち止まり、観客を見回し、悠然と残りの10段ほどのステップを下り、指揮台に登った。さらなる拍手の後の静寂、そして、演奏が始まった。場所はアムステルダム「コンセルトヘボウ」。世界一の音響といわれるコンサート会場だ。普通のホールは、舞台袖から指揮者がすっと出てくるのだが、このホールは階段を十数段下りねばならない造りで、指揮者泣かせで有名でもある。私は天井の装飾がよく見える席にいた。バイオリン、ビオラ、弦楽器の一つひとつの音が目の前に浮遊しているようだ。それでいて、オーケストラの音が重なり合い、身体を包み込む。世界一というのは、その通りであった。
 実は、100年以上前にできたこのホール、基本の空間の形は四角のシューボックス型で、ベルリンのコンサートホールとまではいかないが、演奏者の背後の席(ワイナリー)も少しある。両サイドの高いところは何と、外光の入る窓もあり、音響効果の教科書的には、まったくあり得ないことばかりなのだ。されど、蓋を開けたら、すばらしい音色だった。設計は音響が専門ではない建築家がしており、ホールの音は完成しなければわからないという定説を証明した有名な実例だ。余談だが、この指揮者泣かせの階段を、85歳ぐらいの時のルービンシュタインは、ステップを踏んで下りていたのを、先日BS放送で見て、改めて、驚いた。
 日本の宴会場は講演会にも使われることが多いので、基本、床のカーペットをはじめ、吸音の仕上げが多い。でないと演者の話が聞き取れないからだ。ちなみに、人も結構な吸音要素である。それ故に、音を響かせようとするには難しい。専門的な数字だが、残響時間が2秒ぐらいあると、お腹から響いているなと感じる。これは、風呂屋の桶が、コーンと鳴るぐらいの長さだ。
 では、ミニコンサートなどの際に音をよく響かせるには、どうしたらいいか。ずばり、反射の要素を増やすのがポイントだ。とりわけ、演奏者の背後の壁とその床に配慮してほしい。背後には、板を立てる。その床は、板か石を敷く。ベースをはじめとして、意外と床に響かせている楽器は多い。この2つのポイントを押さえるだけで、かなり違う。和風の座敷でも、この技は使える。背後に、板を仕込んだ屏風を立て、床に漆塗りの板を置いてみてほしい。現代的な技を駆使するなら、演奏の音をスマホで拾う。小さなBluetoothを、お客の背後に複数設置する。そこで、小さな補助音を流す(可能ならば、たくさん)。耳元で囁く音が心地いいという原理と同じだ。お試しあれ。