トイレは、2度流す
updated: 2019.12.01.
環境負荷の新事実。
トイレは、2度流す
「トイレットペーパーは、横のゴミ箱に入れてくださいね」と、言われた時は、何のことかわからなかった。メキシコシティの旅行代理店でトイレを借りた時のことだ。無造作にトイレに置いてある箱には、確かに紙が投げ捨てられていた。乾燥しているのか、臭いは少なかったように思う。日本ではなかなか想像したくないが、中米やヨーロッパでも古い町では、トイレットペーパーは便器に流さないのがルールだ。世界的には、一緒にしないほうがメインだと聞く。
確かに、排泄物とペーパーは、脇に汚物が付着したものがあるという心理的なことを除けば、別にするほうが設備的にも環境負荷的にもとても合理的だ。用を足して、ペーパーを落とし、水を流す。では、この汚物と紙という2種類のものがそのまま排水管を通り下水道まで一緒に流れるかというと、違う。先に塊だけが流れていき、ペーパーは途中の排水管の中に漂っているということが、いろんな実験の結果、最近、明らかになった。これが排水管の詰りの最大原因だとは、意外と知られていない。漂った紙は、次なるもので押し出されないと、時間経過とともに菅に張り付き、運悪く大物や異物が来ると、悲惨なことになる。いや、本当に悲惨なことが起きる。
洋便器は、20年ぐらい前は、後ろにタンクを背負う方法や、水道の圧力で15ℓぐらいの水を流していた。今の日本の最新型では、節水型や渦巻きを作ってから流すなどの技術革新の結果、タンクがなくても水量が半分ぐらいで済んでいる。かつて、背後のタンクの中にペットボトルなどを入れて、流す水量を減らして「節水」するという裏技が流行ったことがあった。確かに、半分ぐらいの水の量でも、前半の塊りは流れるが、結局、紙だけが取り残される。これは、流体力学の問題なのだ。地震などで排水管の勾配が歪む、停電で封水(水の蓋)の自動時間操作が作用しないと、悲惨な事件はより起きやすくなる。では、どうしたらよいか。少量でもよいので2度流すと、この問題は予防できる。だが、未だ2度水を流す商品はない。人工の排水音で何の音を消す装置は、実は排水管にとっては、ありがた迷惑なのかもしれない。少量の水を何度も流すというのが、排水管には優しいのだ。
ちなみに、今回の台風被害のように断水になった場合、生活排水を確保するために、雨水などを利用する方法がある。飲料水をトイレに流さなくても、雨水を簡易濾過して使う(中水方式)。環境に優しく、非常用発電機でポンプを動かせば、雨が降る間、断水になっても生活用水は確保される。これが普及しないのは、雨水を流すのにも下水道料金が加算されているからだと思う。残念だ。